新生児・乳児の呼吸管理

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呼吸について勉強したい方
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資料を作成いたしました。古いものもありますが、誰かの何かの役に立てば幸いです。
※随時更新して参ります。
胎児の循環動態
臍静脈→下大静脈→卵円孔→左心室→臍動脈
胎児では肺は機能しておらず、母親の臍静脈より酸素化された血液を受け取る。
卵円孔という穴により、右心房と左心房が直接つながっている。
肺動脈と大動脈が動脈管により直接つながっている。
肺動脈から流れる血液は、肺につながる動脈が狭窄しておりほとんど肺に流れずに、動脈管から大動脈に流れる
まず、酸素化された血液が母親の臍静脈から、胎児の下大静脈につながって送られてきます。酸素化された血液は、右心房に入ります。
胎児は、右心房と左心房は卵円孔でつながっている為、右心房から左心房に多くの血液が流れます。もちろん、右心房から右心室にも血液は流れます。
右心室に流れた血液は、肺動脈から肺に行こうとしますが、胎児の肺動脈は狭窄しているため、ほとんど肺に血液は流れません。肺動脈からの、血液は肺に流れずに、動脈管を通って、大動脈に流れます。大動脈から、全身に血液が送られます。
ちなみに右心房から左心室に流れた血液は、左心室に移動して、大動脈により全身に送られます。そして、全身に送られた血液は、胎児の各組織に酸素を供給します。
酸素を供給後、全身から戻ってくる血液は、臍動脈を通って、母親に送られます
下大静脈は右房に開口している
胎児のガス交換は、胎盤に依存している。
肺胞換気の行われていない胎児では、肺血管抵抗は高く、肺循環に流入するのは全心拍出量の8~10%ぐらいである。
動脈管は弾性繊維に乏しく筋層にとんだ筋性血管である。
酸素含有量の多い下大静脈血は卵円孔を介して約2/3が左心房へ流入し上半身を還流する。
胎児肺の発達について
胎児肺の気管支は在胎16週ごろに第16分岐まで完了する。
胎児肺は成長とともに発達し、機能分化がおこる。
肺サーファクタントが十分に産生されていない未熟な状態で出生すると、機能的残気量を保てないで広範な虚脱に至る。
在胎日数28週~32週の間に分泌が始まる。
人工心肺後に減少する。
Ⅱ型肺胞上皮細胞から分泌される。
表面張力を減少させる。
母体へのステロイドの投与はサーファクタント産生を増加させる。
SP-B,Cは表面活性作用。SP-A,Dは水溶性で感染防御
新生児に対する100%酸素投与
蘇生時には100%酸素投与をできるだけ避ける。
第一啼泣(テイキュウ)までの時間を延長させる。
死亡率を増加させる。
脳に有害な生化学的変化を起こす。
細胞レベルで有害。
出生時に胎外生活に向けた呼吸循環動態の移行が順調に進行していない事例は、全出産の約10%にみられる。
胎便による羊水混濁の有無により蘇生の流れが変わる。
羊水の胎便混濁がある場合、積極的に気道吸引を行うかは、出生直後に児に活気があるか否かによって決まる。
羊水の胎便混濁がある場合、基本的には自発呼吸を誘発させる前にできるだけ気道から胎便を除去することを目標とする。
新生児のnasalCPAPについて
胃内にガスを飲み込みやすい
PaCO2が高値の場合挿管による人口換気を行う
胎便吸引症候群ではgas-trappingの危険が高くなる
新生児では気管挿管をしなくても鼻にnasal prongを挿入し陽圧回路に接続すれば
気道に持続性気道陽圧をかけておくことが可能になる。
鼻中隔を損傷しないように太めのnasal prongを使用する。
全出生児の1%が救命のために本格的な蘇生手段を必要とする。
乾いたタオルで皮膚を拭くことは、低体温防止だけでなく、呼吸誘発のための皮膚刺激ともなる。→皮膚刺激で有効なのは足底を叩く、もしくは背中をこすること。
後頭部の大きい胎児では、肩枕を入れると気道確保の体位をとりやすい。
吸引が必要な場合には、ゴム球式吸引器または吸引カテーテルで口腔、次いで鼻腔を吸引する。
これは鼻腔の吸引が自発呼吸を誘発しやすいので、口腔内分泌物を誤嚥する危険性があるからである。
出生時に呼吸循環動態の移行が順調に移行しない事例は全出産の約10%にみられる。
新生児の出産直後の疾患
RDSはrespiratory distress syndromeの略称で、呼吸窮迫症候群のことをいう。未熟児に発症しやすい疾患であり、肺胞が虚脱することにより、呼吸不全に陥る。
原因は、肺サーファクタントという、肺胞の表面張力を弱めて、肺胞がつぶれるのを防ぐ物質が、妊娠34週以降に作り出されるが、早産では肺サーファクタンとが生成される前に出産してしまう。
RDSの診断には、羊水もしくは気道吸引物・胃内容物を用いたマイクロバルブテストにより診断。
MASとはmeconium aspiration syndromeの略称で、胎便吸引症候群のこと。MASは名前の通り、胎児が羊水中の自分の便を吸引して肺が便で詰まることにより、出産後に呼吸不全を起こす疾患。
原因としては、胎児が、母体内で強い低酸素血症に陥ると、喘ぎ呼吸が出現する。また、低酸素血症は、胎児の排便を促進してしまう。それらにより、羊水中の便を喘ぎ呼吸による大きな吸気で吸い込んでしまう。
出産後に、MASが疑われる場合は、咽頭鏡直視下で気管内吸引をして胎便の除去を行う。
PPHNとは、Persistent. Pulmonary Hypertensionの略称で、新生児遷延性肺高血圧症。
母体内の胎児は、肺呼吸をしないため、肺動脈が狭窄されており、肺動脈の圧力が高い状態になっている。(詳細は胎児の循環参照)狭窄した肺動脈は、出産後に、酸素分圧の上昇に反応して、開放される。
しかし、何らかの原因で肺動脈が狭窄したままであった場合は、肺動脈が狭窄したままになり、肺循環により、血液の酸素化が不十分になり呼吸不全となる。
PPHN治療
PPHNでは、強い低酸素血症に陥るため、直ちに喚起補助を行う必要がある。バッグマスク喚起から開始して、それでも不十分な場合は、人工呼吸器を装着した喚起補助を実施。
血中酸素濃度が上昇すれば、それに反応して肺血管が広がり治癒しますが、改善しない場合は、一酸化窒素吸入療法(NO吸入療法)や体外式膜型人工肺(ECMO)を実施。
投稿者プロフィール

- 臨床工学技士です。他職種を含めた若手の臨床指導に力を入れて研修会・現場での仕事だけでなく、企業・教育セミナー講師、国内外の学会発表・参加、医療雑誌のコラム執筆に挑戦してきました。興味のある後輩達にそのノウハウや情報提供を行い、よりより後輩を育成するべく日々、自問自答です。育てた後輩達はいつか自分と周りの人々を助けてくれると信じています。
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